ePubによるコンテンツのパッケージ化に興味を持っています
ePubによるコンテンツのパッケージ化に興味を持っています。
ePubは電子書籍フォーマットの1つで、国際電子出版フォーラム (International Digital Publishing Forum, IDPF) が普及促進している「標準」の仕様です。
書籍というと、ページ単位の閲覧が前提となりますが、閲覧するためのデバイスはPCやスマートフォン、タブレットPC等様々。そのどれでも最適な状態で表示される〈書籍のデータ〉の1つがePubです。
▲iPhoneでePub化したこの記事を表示させた状態[→ePub Download]
配布用データはPDFだったけれど
これまでビジネスの場で、ページ単位のマルチデバイス向けデータといえば、PDFが主流でした。
印刷用のデータやWordやPowerPointで作成された書類を広く配布したい場合に、作成したアプリケーションがインストールされていなくても、無料のAdobe Readerがインストールされた環境であれば、どこでも閲覧・プリントアウトできます。とくに印刷用データの確認には、レイアウトデータと貼り込み画像データとのリンクを気にせず、1つのファイルにパッケージ化され、容量を低くも高いままにも設定できるのが便利です。
PDFが見づらいのは元データを用紙サイズ基準で作るから
このPDFというデータ形式、古くから存在しているので、今どきのマルチデバイス閲覧というよりも、手持ちのプリンターで紙に出力できる配布用データという側面が強いといえます。
つまり一般的にプリンタ出力で使用されるA4サイズの紙面レイアウトで作成された文書ということです。スマートフォンの画面で見るには文字が小さすぎるので、拡大しながら見る必要があります。カタログをそのままPDFにしたものをiPadに入れて販促活動に使う場合でも、文字が小さいために拡大しながら見る手間がありますよね。
電子用なら、電子デバイスで読みやすい文字サイズでレイアウトを作るべきとは思うのですが、カタログPDFはあくまで紙のカタログの副産物なので、別予算で電子デバイス用カタログを作る、もしくはWeb界で言われる「モバイル・ファースト」の考え方を取り入れて、電子版を先に作るという方向になるべきかとは思いますが。
PDFのほかレイアウトが固定されたページ(紙の本、コミックなどをスキャンしたもの)を電子書籍の世界では〈フィックス型〉と呼んでいます。これに対して、画面サイズに応じて読みやすい文字サイズのまま1ページに収めるテキスト量を可変するテキスト主体のものを〈リフロー型〉と呼んでいます。
ePubのデータは、XHTML+CSSのパッケージ
ePubデータは、XHTML/HTML5とCSSと画像、章区切りを定義するTOCや作者や書名、言語を定義するMETAデータをzipでパッケージ化した、いわばWebページのパッケージ化です。
Webページがそうであるように、1画面=A4サイズという概念があるわけでなく、1つの章を1つのHTMLで作り、どこで画面を区切るかは、環境やユーザー任せです。テキスト+画像の内容であれば、画面サイズに応じて最適なレイアウトに可変する〈レスポンシブWebデザイン〉に近いともいえます。
ePub閲覧環境は幅広いけれどアプリがまだ...
昨年制定されたePub3では、日本語の縦書き、るびにも対応し、ムービーの張り込み、HTMLファイルごと/全体に対して、〈フィックス型〉〈リフロー型〉を指定できるようになりました。なりゆき任せのテキスト部分と、画面全体で1枚画像というものの混在ができるということですね。
ただ今現在、ePub3の仕様をきちんと表示できるアプリケーションは限られています。
iPhone/iPadでは、iOSに組み込まれている「iBooks」でePubを表示する環境がはじめから整っていますが、PC(Windows/MacOS)、Androidでは、専用アプリをインストールして見ることになります。
PCでは「calibre」が使いやすいですね。Androidは...評判がいいものもありますが、正直どれも...。
困ったものです。あ、楽天kobo Touchでも、読み込んだePubファイルの拡張子を「.epub」から「.kepub.epub」に変更すれば、きちんと表示されるようです。
▲PC用電子書籍リーダー「calibre」でこの記事をePub化したものを表示した状態。黄色い帯に塗られている文字は、検索で「フォーマット」をかけた結果。[→ePub Download]
有料メルマガの成功とePub
電子書籍の世界は、このブログの1つ前の記事でも書きましたが、ビジネスとしての可能性は「妄想系」コンテンツでないと成功していない現実があるようです。
その反面、最近注目を集めているのは、有料メルマガ。
堀江貴文さんが先鞭をつけ、ジャーナリストの津田大介さん、グローバルなノマドワーカーである高城剛さんの有料メールマガジンの成功をうけ、かなりの数の有料メルマガが存在しています。
ネットにあるものはタダが当然。その意識は揺るぎないものかと思っていましたが、日本にはi-modeにはじまる携帯コンテンツの課金制度が並行して存在していて、そのクロスポイントがまさかの枯れた手法である「メールマガジン」だったと。携帯のように課金のプラットフォームが整備さえしていれば、コンテンツを売ることは可能だったのか、という驚きとともに、いやそれでもネット成熟期の今だからこそ可能になったことなのだろうとも思ったわけです。
誰でも有料メルマガで成功できるかといえば、当然、お金を払ってでもこの人の情報提供力を手に入れたいと思わせる「人」の力が必要です。ある意味ファンクラブのようなものかも、とも感じます。
前回記事の最後に書いたことのリピートになってしまいますが...。津田大介さんのメールマガジンは、毎回ものすごいテキスト量で、メールという形態でスクロールしながら読んでいくのはキツイです。ということで、同時にリリースされるePub版をダウンロードして、iPhoneのiBooksで私は読んでいます。このフローがあまりに自然なので、ePubによるコンテンツのパケージ化に対して、ものすごい肯定的な意識が芽生えているのです。
【参考記事】コンテンツ販売の未来は――津田大介さん、佐々木俊尚さん、ドワンゴ川上会長など議論(ITmediaニュース)
過去のデータをePubでパッケージ化保存
メールマガジンでなくても、先に書いたカタログでもいいと思うのです。企業サイトの製品情報には、最新ラインナップの情報しか基本掲載されていません。愛着のある自分が買ったモデルは、あっという間に何世代も前のものだったりします。
自分が購入した時にあった詳細な情報や、その気にさせてくれた「誘い文句」を、パッケージ化された情報として手元に残しておきたいというニーズもあると思うのです。データになっていれば、クラウドサービスに保存しておけば、ライフヒストリーにもなりますから。新商品の購入動機には直接結びつかないかもしれませんが、ブランドに対するファンづくりには役立つと思います。
いまはまだ、表現力とコスト面で、Webに掲載された製品情報やソフト情報をePubでパッケージ・アーカイブ化はキツイかもしれません。ニーズのある人は、勝手にカタログを自炊しているかとも思います。
でも、WebのデータとePubの親和性から生まれる情報のパッケージを提供することによって、気に入ったコンテンツを〈所有〉し、なんでもかんでもググって探すのではなく、自分が所有しているアーカイブから情報を拾い出す効率の良さが当たり前になるかもしれません。
追記:
2012年8月25日の朝日新聞で、「電子書籍を読みたいですか?」という読者アンケート結果が出ていました。結果は「はい」が28%で「いいえ」が72%。
回答者の平均年齢が58歳という点から、電子書籍への否定的意見が予想以上に多かったようだと記事にありましたが、多分若い人が多かったとしても、まだまだこの程度の認識ではないかと思います。
否定的な人の大半は「紙の本に慣れ親しんでいる」という理由を挙げていますが、読書好きな方の中には「これ以上本を増やさず省スペース化させたい」という意見もあり、実際に電子書籍に親しむきっかけがあれば、これから変わっていくのだろうなとは感じました。
紹介されていた意見で最も興味深かったのは、「残る人生を考えて持ち物を整理するためにも」電子書籍移行した方。
世界を飛び回って仕事されている高城剛さんも、身の回りのモノを極力減らし、身軽な状態で健康的に生きていくことを実践されてます。このようなライフスタイルは、今は先端の人ではあっても増えていくのではと感じています。
written by TZK:アートディレクター
※この記事内容はTZK個人の見解・意見であり、所属する組織の公式見解ではありません