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〈ピースアド〉のドキュメントを観て

2010年8月13日 Creatorsトーク,レビュー

WOWOWの「ノンフィクションW」という枠で、〈ピースアド〉を取り上げていました。
〈ピースアド〉とは一言でいえば平和広告のこと。
東京外語大学大学院地域文化研究科平和構築・紛争予防講座に、紛争地域出身の人を含む世界中から集まった学生が、自らのテーマをいかに〈ピースアド〉というカタチに落とし込んでいくかの密着ドキュメンタリー。興味深い内容でした。

戦争や紛争が起きる時、それを起こしたいと考える側がとる行動は、特定の敵に対する憎しみや怒りを世論に植え付ける戦争扇動広告〈プロパガンダ〉を作ること。
それに対し、戦争抑制をめざす広告が〈ピースアド〉であるという考え方。
式神が送られてきたから、送り主に式神返しをするというものではありません。
言われたから言い返すでは、結局は争いが起きて、相手の思うつぼです。
〈ピースアド〉では、敵・味方という分け方で、敵をネガティブに表現することは禁じ手です。
それでは〈プロパガンダ〉と同じになってしまうから。
両者の立場を公平に、片方だけを言わない。 考えさせる、気づかせる。〈プロパガンダ〉を中和、毒消しするコミュニケーションでなければいけない。
これはけっこう難しいことです。

番組では、各自のテーマを〈ピースアド〉としてカタチにし、展示会をするところまでを描いていました。伝えたいメッセージをどうデザインしていくか。実際にデザインを作っていくのは、電通など大手広告代理店のクリエイターたちです。つまりこのプロジェクトのクライアントは、テーマを持った学生です。
戦争・虐殺を経験したことのない日本の若いクリエイターの提案するデザインは、リアルな問題意識を持った学生と温度差があるのは当然だと思います。それでも何度も話し合いを続け、シンプルだけど、政治的でないからこそ若者をはじめ万人になにかしらを伝えられるかも、という作品ができあがりました。

それを見ていて思ったのは、広告というからには、展示会に足を運ばなくとも、日常生活の中で自然に目に触れるようなカタチで広めていけるのか、ということ。
それこそWebで発表して、Twitterで告知すれば、アートや広告に興味があったり、社会問題に意識の高いネット人間になら、目に触れる機会があるでしょう。でもTwitterでの呼びかけには、深く考えるという効能を期待しにくいですよね。
さまざまなメディアを駆使して〈ピースアド〉を広めていくには、どんな手法が適しているのでしょう。

ジョン・レノン&オノ・ヨーコが、1969年12月に行った世界規模のキャンペーン「WAR IS OVER」のことが頭の中にリロードされました。ああ、あれこそまさに〈ピースアド〉。
さらにクリスマスソングの定番となった「ハッピー・クリスマス」で何度も何度も繰り返される「WAR IS OVER! IF YOU WANT IT」のコーラス。今はもう2010年です。世界中ほとんどの人は平和、貧困からの脱出を望んでいるはずなのに、まだ戦争は世界からなくなっていません。


digital ピースアド展2009(HIKESHIーマエキタ伊勢崎研究室)


 

written by TZK:アイデアビューロー・Webチームのアートディレクター。

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