サイレントナイト、ダークナイト
クリスマスイブ、仕事を終えて帰っていくメンバーに、
「いいクリスマスイブを!」
と声をかけると、
「今の一言ズドンと堪えます...」と苦笑いされちゃいました(笑)
みなさん、どんなクリスマスを過ごされましたか?
ニュースでは毎日世界的大不況と大企業のリストラの話題。
なんとなく浮かれている場合じゃない空気が世の中に蔓延して、キラキラとイルミネーションで飾り立てられた街を歩いていても、ハッピーなアゲアゲ気分になれません。
今月社内のBlu-ray仲間がこぞって買い求めたソフトがあります。
「ダークナイト」
今年観た映画で、もっともココロにズドンときたばかりでなく、まさに「今」という時代を象徴している作品でした。
アメリカンコミック・ヒーローというフィクションの世界で、人間の内面性と現実感にフォーカスをあわせ、ストーリーの密度を高めることで、映画として大成功を収めた「バットマン・ビギンズ」。そこからつながるクリストファー・ノーラン監督製バットマンの2作目がこの「ダークナイト」。
アメリカでは歴代興行収入が「タイタニック」につづく第2位という記録を打ち立てた、この作品なしに2008年の映画は語れないという存在です(日本の興行収入ランキングでは年内ベスト10にも入っていないんですけど)
from "Internet Movie Poster Awards"
「ダークナイト」で描かれるのは、人間の中に存在する<悪>について。
これが遺作となってしまったヒース・レジャーが、自らの狂気の扉をも開き切ってしまったかのように、怪人<ジョーカー>を演じています。圧倒的な存在感です!
<ジョーカー>には善意のかけらもなく、純粋な悪人。復讐や金のためといった目的あっての悪党ではなく、悪であることをただ楽しんでいるヤツ。そんな人間を前にすると、正義とはいかにもろく貫くことに強い意志が必要なのか。
アメリカ国民が現在置かれている状況、たとえば泥沼化するイラク戦争、得意の強気な交渉でも埒があかない北朝鮮の存在が、<ジョーカー>という存在に集約されているのが見てとれます。
純粋な悪意には、論理や交渉、戦略は通用しないのです。
通用しない、ということに自らパニックに近い状況に陥り、さらに相手の悪意を冗長させるという魔のスパイラル。得体の知れなさは、恐怖です。
アメリカ国民だけでなく身近に感じるのは、臨界点を越えた状況に陥ると人はモラルを保つことができず易々と悪に落ちるという現実。スクリーンの中で展開されるスリリングな状況は、イコール観客の心の中をも試されているようです。「誰でもよかった」と殺人を犯す人間がこの日本にもいますから。
悪を怯えさせるため、自らが恐怖の存在となることを決めた闇の騎士(ダーク・ナイト)であるバットマン。
「バットマン・ビギンズ」につづいて、男の子をわくわくさせるようなガジェットが登場しますが、今回は内面の苦悩も大きくなってきます。そもそも正義をACTIONするために悪のイメージを身にまとうという二律背反が、バットマンの存在を複雑にしていますからね。
バットマンに助けを求めるために焚かれるコウモリマークのサーチライトが破壊され、光のサインが空に映し出されなくなった夜、それもまたダークナイト。
クリスマス・イルミネーションで光り輝く街並は、あたりが闇であるからキレイに見えるもの。
不穏な社会状況の中にあって、自ら悪に陥ってしまわないよう警戒する意味からも、まだ観ていない人には是非おススメしたいです「ダークナイト」。
written by TZK:アイデアビューロー・Webチームのアートディレクター。