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「言霊」使いになりたい

2008年11月 9日 Creatorsトーク

仕事で納期が迫ってくるなか、進行がなかなかうまくいかない時、私がよく思い返す言葉があります。
元国連難民高等弁務官・緒方貞子さんの「物事は直線的には進まない。忍耐と時間をかければ物事は動く。これが私の哲学だ」という名言。
直線というのは、2点を結ぶ最短距離のこと。遠回りや無駄、後戻りなどいくつもの複雑な曲線を通っていかないと、物事は解決していかないものだということ、年齢を重ねるたびに思い知ります。

11月4日、オバマ氏が次期アメリカ合衆国大統領に決まりました。
日本では時期を同じくして小室氏のニュースが大きく取り上げられていましたが、大国アメリカで初の黒人大統領が誕生するという歴史的瞬間を、Liveで経験したということは、今を生きている全世界の人たち共有の時代感覚になっていくでしょう。
オバマ氏の勝利宣言スピーチ。人の心を掴む巧みさにうなってしまいました。
「CHANGE」というキーワードと歴史的な黒人大統領の誕生を、106歳になる黒人女性の投票の歴史と重ねてまとめるあたり。「いいライターを揃えてるんだろうなぁ」と穿った見方をしてしまいつつ、それを影響力のある言葉として口にできるのは、オバマ氏は日本でいう「言霊(ことだま)」使いなんだと思い知りました。
問題は山積。さまざまな立場の人がそれぞれの「CHANGE」を期待しています。決して直線的な変化ではないでしょうけど、「言霊」はこれからどう生かされていくのか、楽しみでもあり恐くもあります。

さて、心に届くスピーチといえば、もうお一人。
高橋尚子選手の引退記者会見でのスピーチ。手元の原稿に目を落とすようなことはせず、目の前の記者達にしっかりと顔を向け、しっかりとした日本語で言葉を置いていくさまは、やはり「言霊」を感じてしまいました。
引退の理由云々ではなく、会見の結びに語られた言葉です。以下引用です。

「マラソンを振り返ると、私は走り終わるといろいろな方から『頑張ったね』『勇気をもらったよ』など多くの言葉をかけていただきました。しかし、マラソン選手は1人で走れるわけではありません。チームを支えて下さるスポンサーも勿論ですが、テレビや報道、沿道で応援してくれる方、沿道を整理してくれる方、警察など多くの人が支えてくださってマラソンは成り立っています。もっと深く言えば道路を造って下さる人、道路を整備して下さる人など、本当に多くの人がいてこのスポーツは成り立っています。しかし、そういう方が日々の仕事が終わって『頑張ったね』などと声をかけられるかといえば、なかなかそういうことはないと思います。なので、私はこの場で多くのみなさんにお礼を言うとともに、日々の仕事の中で『頑張ってください』とエールを送りたいと思います。本当に今までありがとうございました」

これは政界が放っておかないよなぁ、と穿った見方をしてしまいつつ、人間性なんだな、つまり、と納得してしまいました。

自分たちも作業の工程で、何人ものスタッフが会社に泊まりがけで作業することがあります。
自分の指示で、時間がない中さらに手間をかけさせてしまうことも多々あります。
1人ではできないことを実現しようとする時、自分以外の人の労苦に応えたいというキモチがわき上がります。そして感謝が生まれます。決して直線的に進まなくても、客観的にゴールを見据えたいと自分に言い聞かせながら。
できるなら、そのキモチを「言霊」として伝えることができたなら、なんて思っています。

長々した独り言になってしまいました。

written by TZK:アイデアビューロー・Webチームのアートディレクター。

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