お金を使わない新ニッポン人
日曜の夜、テレビ東京でやっていた「久米宏・経済スペシャル"新ニッポン人"現わる!」は、興味深かったなぁ。
お金を使わない今の20代、彼らを「新ニッポン人」と番組が命名、今の40代いわゆるバブル世代と、幸福感と消費傾向の違いを紹介してました。
今の40代が20代だった頃と、こんなに違うんだよ?いつの時代も繰り返される「今どきの若者は......」という、年上目線からはじまった番組。
新ニッポン人は、車を欲しいとは思わない。お酒を飲まなくなった、とりあえずビールではなく1杯目から自分の飲みたいものをオーダーする。海外旅行なら、ボランティア経験のできるツアーがいい。老後の自分を考えて、しっかり貯金をする。
たしかに新橋系おじさんとは違う人種かもしれない。
この記事を書いてる僕は40代のクセに、車持ってないし、お酒は基本飲まないし、個人年金を月々積み立ててます。だから20代と意識を同じにしてるんだよ、と言いたいわけじゃないですよ。たまたま今の時代の空気に同調してることがいくつかあるけど、20代にバブルという異常な時代を経験したかどうかで、生き方の価値観は大きく違うよなぁ、とこの番組だけでなく現実でも十分感じてるわけです。自分の存在をスケールアップさせたいどん欲さというか、負けん気というか......。
40代と20代って、会社の中においては、モロに上司と部下の年齢じゃないですか。
上をめざそう、自分のなりたい自分に近づこうというモチベーション部分が、40代の僕と20代のメンバーとでは、同じ質でないことは気づいてましたよ。
それでもWebの世界は、先人のやり方に習っていれば間違いないというものでなく、その世界にいるすべてのヒトが同時進行で同時多発的にやり方を築いているから、キャリアの上下関係は本人の努力次第ってところがある。モチベーションの質に対して良い悪いは関係なく、結果を出せるかどうかがポイントなんだって考えるようになった。迷った時期があったんですよ。同じことをやっているのに、どうして自分とまわりとで温度差が生じるのかって。
賢く堅実、だけどダイナミックレンジが狭い。将来に希望を抱いていないから。
日本という国の未来の危うさを感知して、自衛しながら生きてる世代。
ざっくり丸めてしまえば、「新ニッポン人」にはそんな感じだって。
そして彼らは、バブル世代の金遣いを「かっこ悪い、イタイ」って思ってるんだって。
バブル時代の残骸を目にした時、一種の気恥ずかしさを40代も感じるけれどね。六本木ヒルズが誕生した頃からまた「セレブ」という言葉に置き換わって、高級志向が蔓延してきたように思う。それを身近に感じるかどうかは、世代というか人種によってちがうけれど。
この番組が興味深かったと書いたのは、番組終盤の展開がちょっと意外だったから。
スタジオに集まった40代グループと20代グループの意見を拾っていく展開はなくて、久米がマイク1本持って街に出て、テレビカメラをまわさず20代にインタビューしたんだよね。27歳の写真家 梅佳代の目を通した写真に、マイクでひろった声がかぶさる映像が淡々と続いていくわけ。テレビカメラの前でなく、久米という人を前にした時の「話しかける」素の感覚が映像になってて面白かった。
いろいろ取材してみて、どこに落としどころを見いだしたらいいか、迷った結果だったのかも。理解する、しないでオチをつけてしまうのは、これからの日本を担う彼らを否定することになってしまい、身も蓋もないから。
そんなことを想像していたら、この展開、どことなくマイケル・ムーア作品から感じる何かに近いと思った。
作為的ってわけではなく......、いまあるメディアが相手にしていない層の声を、メディアに乗せたらどうなる?もっと知りたいと思うかい?という挑発感がムーア的だったのかも。
こういう内容を民放の番組として放送できたっていうのはゲリラ的だよね。買ってもらうためにCMを流してるスポンサーがいる番組で、モノに金を使わない人たちを紹介しているんだから(苦笑)
written by Hidden:アイデアビューロー・Webチームのアートディレクター。